化粧考

(日本VR学会誌2012年6月)http://journal.vrsj.org/17-2/s6-7.pdf 

 かなり前のことであるが、あるボディ・ペインティングの写真集に次のような一文を寄せたことがある。
 「神は芸術家である。蝶、孔雀、熱帯魚。いずれも動物の体をキャンバスとした見事な作品群である。ところが人に対しては、肌という未完のキャンバスのみを用意された。そして人は、そのキャンバスを自ら彩る特権が与えられた・・・・・」
いまでもまさにその通りだと思う。しかし改めて思う。人はなぜ自らを彩るのか? Continue reading

改めて人の繋がりと文化の大切さを思う

(鼎 第21号、2011年7月15日)

大震災の衝撃
 2011年3月11日、日本に大きな衝撃が走りました。それは地震という物理的な衝撃だけでなく、日本人である私たちの心を大きく揺さぶりました。私自身、3月11日の前と後では、世界がまったく違って見えるようになりました。大震災のあと数ヶ月の間は、頭の中が空白になって何も考えられませんでした。
 でもそれではいけない。今回の大震災の記憶と教訓を未来につなげるためには、一人一人がそれぞれの立場から、そこで何を感じたか、考えたかを語っていかなければいけない。
ようやくそう思えるようになったのは、つい最近になってからです。 Continue reading

感性研究と私

(日本感性工学会誌「感性工学」2011年6月)

出会い
まずは私自身の紹介から始めることをお許しください。私と感性研究の出会いは、それほど昔ではありません。私自身の専門は、コミュニケーションの基礎を技術の立場から探ることで、もともとは情報理論を研究していました。いわば情報理論という数学的な方法論からのコミュニケーションの研究です。それが、今から約25年前、より自由な立場で人のコミュニケーションの本質を探ることに興味を持つようになりました。
 そのきっかけはテレビ電話の研究です。 Continue reading