子どもは自ら育つ 2019.05.05-05.11

子どもの役割は大人になることだ。大人になるために子どもは自ら育つ。ところが今の教育は、そのことを忘れてしまっているように見える。教えなければ育たないと思い込んでいるように見える。教えを強制されると、子どもはそこから逃避する。自ら育つこともやめてしまう。

子どもは自ら育つ。子育てがうまくいかなかったのはすべて親の責任だと悩む必要はない。親ができることはほんのわずか、育つ環境を提供することくらいだ。何よりも大切なことは子どもを信用することだ。信用すれば子どもはきっとそれに応えて、自ら育ってくれる。

子どもは自ら育つ。戦後の日本がそうだった。身寄りのない多くの子どもたちが、焼け跡で自らの力で必死に生きた。教育環境は劣悪であった。しかし立派な大人になった。もしかしたら恵まれた環境にいる今の子どもたちよりも・・・。それは言い過ぎだろうか。

子どもは自ら育つ。ヒト以外の霊長類は、子どもに手取り足取り教えることはない。真似させるだけだ。一方でいまの社会は高度に複雑であるから、学ばなければいけないことが多すぎる。効率的に教えないと追いつかない。それもわかる。しかし、それではますます学びは受け身になる。

子どもは自ら育つ。そのためには主体的な学びが大切だ。いまアクティブラーニングという教育法が注目されている。賛同するけれども難しい。それを子どもに強制すると主体的でなくなる。ましてや教師に対してそれを強制すると、まったく意味がないものになってしまう。

子どもは自ら育つ。そのもとで自らの価値観を獲得していく。これに対して教えるという行為には、どうしても教える側の価値観の押し付けをともなう。それを絶対視して強制すると、子どもは考えなくなる。自分自身で判断できなくなる。真の意味での大人になれなくなる。

子どもは自ら育つ。親としては子どもが危険に晒されないように、いつまでも守ってあげたい。それが親の義務だと思っている。しかし、ほとんどの親は子どもよりも先に死ぬ。最後まで責任をもって守ることはできない。親に守られなくとも自ら生きる力を身につけること、それが大人になるということだ。