あいさつ 2010.10.17-10.23

「知らない人から声をかけられたら、すぐ逃げなさい」。いま日本では、子どもたちにこのように教えている。一方で、僕の仕事部屋があるマンションでは、「知らない人をみかけたら声をかけて、笑顔であいさつをしよう」。これが合い言葉になっている。

マンションのエレベータで人と会うと、知らない人からも笑顔で挨拶がくる。こちらも笑顔で挨拶をかえす。実はこれはマンションの安全を確保する一番いい方法なのだ。笑顔で声をかけられたら、そこでは泥棒はできない。

出かけに人と会うと「おはようございます。どちらへ?」それに対して「ちょっとそこまで」。これで十分に答えになっているところが面白い。「どこへ行くかあなたに言う理由はありません」などと答えたら、相手はびっくりする。

「ご馳走さま」。これはもともとは料理のもてなしへの感謝の言葉であるが、日常生活では、それほどのご馳走でなくても、食後には自然に口にでる常套句である。そのような感謝の気持ちが日常的に気軽に交わされること、それが重要なのだ。

「今日もきれいだね」。もし家庭でのパートナーをきれいにしたかったら、このように声をかけることが大切である。日本の男性はこれができない。朝早くなくても「おはようございます」。ご馳走でなくても「ご馳走さま」。それと同じ気軽な感覚で言えばいい。

「今日もきれいだね」。これはパートナーに唐突に言っては絶対にいけない。「何かあったの?」といらぬ誤解を招くことになる。重要なことは毎日、日常的に声をかけることである。そうすれば、ときどき危ないことがあっても気づかれない。

「おはようございます。どちらへ?」「ご馳走さま」・・・。情報理論的に、これらの言葉には、どれだけの情報量があるのだろうか。すべて予測できるという意味では,情報量はゼロになってしまう。でも、このような情報量ゼロの言葉のやりとりが、人間社会を支えている。