何か新しいことを提案すると、「それはできません。無理です」という答えが返ってくる。僕にとっては、それはいつも出発点だった。出発の合図であった。
新しいことへ挑戦するときに大切なことがある。まず同じ志をもつ人と夢を共有し、盛り上がる。こうしてまずはエネルギーを貯める。反対者の説得に入るのはその次だ。この順番を間違えると修羅の道に入る。
新しいことへの挑戦には、失敗はない。たとえ当初の目的は達成しなくとも、挑戦することによって初めて得られる何かが必ずある。思いも寄らぬ発見もある。それは貴重な財産として残る。
「筋がいいことと、悪いこと」は何事にもある。筋がいいことは、とんとん拍子に物事が運ぶ。逆に筋が悪いと、一つ関門を抜けると、その先にはもっと困難な関門が待ち受けている。筋がいいことはその流れに乗り、悪いことはじっくり取り組む。
僕はもともと怠け者だから、「駄目もと」が好きだ。駄目もとだったら、失敗を恐れる心配はない。駄目で当たり前、うまくいったら皆が拍手をしてくれる。そんないい加減な気持ちでは駄目だと言われるけれど、駄目もとだから楽しく挑戦できる。
ほとんどの挑戦は自分一人ではできない。仲間がいて初めて可能になる。それぞれがみな主役となる。そこで大切なことは、自分だけの業績のように自慢しないこと。それはプロデューサの必須条件であると、昔ある講演で聞いた。
なぜ挑戦するのか?自分の名前を残したいからか?いや、逆に「自分の名前が最後に消えること」。僕の場合は、それを挑戦のゴールとしてきた。僕の名前が消えることにより、挑戦は自立して本物になる。自ら成長するようになる。