組織 2011.01.30-02.05

定年後、組織に属さない身となった。人からは悠々自適でいいですねと言われるけれども、組織から離れてみると、組織の重要さがしみじみとわかる。一方で、組織の怖さもよくわかる。

昔からの友人が、組織のトップになることも多くなった。数ヶ月後に会うと、貫禄がついていることに驚く。顔も立派になっている。組織のトップとしての自覚がそうさせるのであろう。トップになったことよりも人間的な成長を羨ましく、そして嬉しく思う。

これからの人生をデザインする若い人たちにとって、組織とは何なのか。組織は個人を縛るけれども嫌ってはいけない。組織は自分を鍛えて成長させてくれる場である。社会を学ぶ場である。組織によらなければ実現できないこともある。

人には二枚の名刺がある。一枚目は自分の名前だけの名刺、二枚目は組織の名刺。二枚目しか持っていないと、組織だけが自分のアイデンティティとなってしまう。二枚目は組織がデザインしてくれる。一枚目をどうデザインするか。それはそれぞれの課題である。

社会は、どのような組織のどのような地位についているかによって、人を評価する。それにあわせて名刺には所属と肩書きが記される。僕のように組織から離れると、そこが空白になる。肩書きが空白になることにより、自分自身の真価が問われるようになる。

「あなたの職業は何ですか?」この質問に対して寺山修司はこう答えたという。「職業は寺山修司である」。自分は自分でしかない。職業という一般概念によって、自分を勝手に分類されたくない。僕もそう言えるようになれるだろうか?

組織から離れると、自分の弱さが見えてくる。組織にいるとそれなりの地位が与えられて、社会的にも貢献していると評価される。定年後あえてその道を選ばなかった自分に、取り残されたような一抹の寂しさも漂う。そうまでして、これから何をしたいのか。煩悩の中で改めて自問する。