プレゼン能力 2011.03.06-03.12

研究者を志望する学生たちに、まずは身につけてもらいたいこと、それはプレゼンテーションの能力だ。どれほど素晴らしい研究をしても、それがきちんと表現され発信されなければ、その研究は死んでしまう。

プレゼンは相手に伝えるためだけにするのではない。プレゼンすることによって、自分が話したいことが自分でわかるようになる。曖昧だったことが明確になる。プレゼンは実は自分自身とのコミュニケーションなのである。

成果が出ていないとの理由で、研究室ゼミで発表しない学生がいる。プレゼンは研究成果が出てからするものではない。成果が出ないときに、なぜ出ないかをプレゼンすることはもっと大切だ。プレゼンすれば、それによって研究室の叡智を集めることができる。

プレゼンで大切なことはメッセージ。何を主張したいかを、その根拠とともに明確に表現することである。論文審査などでの審査員の殺し文句は「要するに君は何をして、何を言いたいのかね?」このような質問が出るようであれば、プレゼンにメッセージがなかったと反省したほうがいい。

学会のプレゼンも一種のコミュニケーションであるから、研究を相手に印象づけるためのシナリオが必要となる。たとえば起承転結は研究発表でも重要である。僕は問題提起型の講演では、起承転転のシナリオも採用する。逆に結論が大切なときは、最初に結から入ることもある。

プレゼンの成功は、練習の繰り返ししかない。それも、研究室ゼミだけでなく、さまざまな相手におこなった方がいい。同じ専門の同僚、必ずしも専門でない友人、家族、さらには恋人相手も効果的である。いいプレゼンができれば好感度も高まる。

(震災のため未投稿)研究者は、知の「探求者」であると同時に「表現者」であり、メッセージの「発信者」でもあることを忘れないでほしい。知は表現して発信することによって共有される。その感動は子どもたちに伝わり、未来へ伝承される。人類の財産になる。