ワークライフバランス 2011.04.24-04.30

「ワークライフバランス(仕事と生活の調和)」は男女共同参画の文脈で女性の問題として語られることが多い。しかし、この根源はむしろ男性の働き方にある。女性だけにワークライフバランスを求めても、それは問題の本質ではない。

学術研究の現場でも、女性若手研究者の活躍がめざましい。しかしその現場は、もともと男性社会であったから、ワークライフバランスは前提とされていない。男性も含めてバランスが可能なしくみを構築しなければ、学術研究の未来はない。

研究者においてワークライフバランスは果たして可能なのだろうか。成功している研究者に聞くと「研究は寝食を忘れて没頭しなければできない」と、ワークライフバランスとは正反対の答えが返ってくる。そうかもしれない。でもそれでは何も解決しない。

ワークライフバランスは、女性として最も充実した時期に、研究と育児との両立を図る若手女性研究者にとって切実な問題である。研究者として研究に集中・没頭しなければならないときが必ずあるとすれば、その時に有効に働く「サポート体制」をどう構築するかが重要となる。

ワークライフバランスは、母と子だけの小さな単位ではできない。父親の参加に加えて祖父母の存在も大きい。さらには隣近所も含めた地域のサポート、友人夫婦と相互のベビーシッター、保育所の整備・・・。サポートする単位を少しでも大きくすれば、バランスも可能となる。

ワークライフバランスを可能にするには、学術研究のしくみの見直しが必要とされる。例えば研究者の業績報告は、ワークとしての研究業績のみで、ライフとのバランスは対象にならない。逆にバランスは評価が低くなることもある。このような評価のしくみから変えなければならない。

学術研究におけるワークライフバランスは、それが研究の障害になるという位置づけでは本物にならない。むしろ、バランスをとっている研究者でなければ、いい研究成果が出ない。学界の意識をそのようにしなければならない。これは学術研究そのもののありかたに対する問いかけでもある。