創造型研究の進め方 2011.07.31-08.06

研究において論文執筆は大切である。論文はコミュニケーションの手段である。それがなければ研究は無駄になる。それを大前提としてあえて言いたい。果たして論文だけが研究の目的なのか? 論文数やそのインパクトファクターだけで研究が評価できるのか?

科学技術には、「探求型研究」と「創造型研究」がある。探求型研究では、知の積み上げとその品質管理が大切である。そのための仕組みが論文であり、査読制度である。一方の創造型研究、それはどのような仕組みで進めればいいのか? 

技術研究は、もともと「創造型研究」であるはずなのに、いままでは「探求型研究」の方法論をそのまま借用して進められてきた。言い換えると、独自の方法論の構築を怠ってきたのだ。技術研究が単に応用理学であったときはそれでよかったが、それはすでに限界に来ている。

技術研究の目的は、社会における生活・文化の向上である。大学での技術研究は、学会への発表だけが中心で、社会との接点はほとんどない。なぜか?いままでは社会と関わるのは産業界であって、大学と産業界の間で分業体制があったからだ。でも、いまはそのような時代ではない。

研究成果の社会還元の一つとして、ベンチャーの起業が大学でも推奨されている。でも、そもそも社会との接点がなく進められた研究では、それは絵に描いた餅でしかない。研究の進め方そのものの見直しがなければ、日本ではGoogleは生まれない。

技術と芸術は、さかのぼればどちらもArtである。もしかしたら、術という意味で、方法論も似ているのかもしれない。いずれも人の創造的な表現であり、社会や文化、そして他ならぬ自分自身に真摯に対峙することによって営まれる行為である。

技術研究も、論文執筆という知の積み上げだけでなく、まずは自らの表現行為として、研究を社会に見せたらどうか。それをフィードバックさせて、さらに研究を展開させる。この繰り返しが創造型研究の本質なのではないか。僕はこれを研究の「オープンスパイラルモデル」と呼んでいる。