オープンスパイラルモデル 2011.08.07-08.13

自然科学は、自然と向き合うことで成り立つ。一方の技術研究は、社会と向き合うことが研究のプロセスとして必須のはずである。研究の「オープンスパイラルモデル」は、その当たり前のことを、創造型研究の方法論として体系化しようとする試みである。

これまでの研究の大部分は、研究→学会→産業→社会という一方向のリニアモデルでおこなわれてきた。これに対してオープンスパイラルモデルでは、まずは研究を社会に見せ、それを研究に反映させる。これを繰り返すことによって、研究の実用化と学術としての体系化を目指す。

ソフトウェア開発の分野では、すでにオープンスパイラルは常識になっている。インターネット環境もインフラとなっている。まずは中間段階のβ版を社会にまず出して、それをフィードバックさせながら開発を進める。さらにはオープンであることが本質であるLINUXモデルもある。

オープンスパイラルモデルでは、研究をオープンにする仕組みの整備が必要となる。専門家向けには学会でのデモもあるが、一般向けには科学館などでの展示、さらにはネットでの公開もあろう。どこで誰を対象にするかによって、スパイラルのデザインも変わる。

オープンスパイラルモデルでは、研究を社会に見せるだけでなく、それをフィードバックして研究に役立てる方法論が大切である。単なるアンケート調査では、感想程度の反応しか得られない。社会への公開も、研究の重要プロセスとみなして、しっかりした実験計画を立てる必要がある。

オープンスパイラルモデルでは、社会と接点を持つさまざまな活動を、その研究者の業績としてきちんと評価することが必要である。論文数だけで評価されるような研究環境では、誰もそれ以上に面倒なことはしない。社会と関わりのある研究は発展しない。研究者も育たない。

科学技術において、新たな分野の研究を育てるには、研究の方法論をその評価尺度まで含めて構築する必要がある。先駆的な研究者はそれを模索するが、決して一人ではできない。学会レベル、さらにはそれを超えたレベルで真剣に考えなければならない。