私たちの生活に絶対的な安全はない。多かれ少なかれ危険がある。天災であるか人災であるかは別として、大災害も必ず起こる。そのような「非常時」に、私たちはどのように行動したらよいのだろうか。何が必要なのだろうか。
いざと言う非常時のために、避難訓練やマニュアルがある。しかし本当の非常時に、訓練通り(マニュアル通り)に行動した方がよいのか、それとも自分の判断を優先させた方がよいのか。今回の津波に関して言えば、皮肉にもマニュアルに従った人が亡くなってしまった。
避難訓練やマニュアルが想定していた範囲の災害であれば、その通りに行動した方が安全である。一方でこれを超えた災害の時は、むしろ自分自身で判断して行動することが要求される。大切なことは、非常時にそのどちらであるかを瞬時に直観できる能力を身につけることである。
非常時に生きる力とは何か?平常時と非常時では人の行動規範は異なる。平常時は考えて行動した方がよい。非常が起きたときは、まずは自分を守らなければならない。それには、「非常を感じる力」が大切である。そして、「瞬時に何をすべきか判断する力」、「的確に行動する力」が必要になる。
非常時は、災害が起きた後も長く続く。そこでは「耐える力」が求められる。それも前向きに耐える力が必要になる。それを可能にするのは、「心のゆとりを持つ力」であろう。「心の免疫力」と呼んでもいいかもしれない。
非常時に、最後に拠り所になるのは何だろうか。それは「助け合う力」かもしれない。非常時に、人は一人では生きられないことを知る。人と人のつながりの大切さを知る。「人とつながる力」、これも人として必要な「生きる力」である。
非常時に生きる力を学校で教えることはできない。知識ではないからだ。もちろんマニュアルにもできない。人そのものに備わった能力だからだ。僕は、それは日々の生活において身につけるものだと思っている。こどもであれば、毎日の遊びの中で培われる。それがいま欠けていることが気になる。