男らしさ 2011.11.13-11.19

草食系という呼び方がある。「最近の男性は男らしくない」という文脈のなかで、どちらかと言えば否定的な意味で使われることが多い。しかし、そもそも「男らしさ」とは何なのだろうか。

動物、特に肉食動物では、男らしさのキーワードは、戦いとそれによる捕食である。戦って獲物を捕らえる。それを食料として雌や子どものもとへ運ぶ。これに加えて外敵の襲撃から家族を守る。そのような能力に秀でた雄は男らしい(雄らしい)とされる。

草食動物では、外敵との戦いは逃げるしかない。食物も草原にいくらでもある。そこでは性闘争に勝ち残ることが雄の重要な課題となる。雌を獲得するための雄どうしの戦いもあるけれども、雌へのアピール(求愛)も大切である。雄はひたすら雌の気を惹くため自分を飾りたてる。

いま、団塊よりも上の世代は戦争の時代に育った。そこでの男らしさは、戦いに強いことであった。戦地での攻撃能力が男の必須条件であった。肉食系の男性がもてはやされた。戦後は平和になった。そこでは当然ながら男の条件が変わる。草食系の男性が増える。

かつて日本の戦国時代、関ヶ原の戦いが終わって江戸に幕府ができるまでは、戦う能力が重要であった。武士はひたすら武芸の習得に努めた。その時代のヒーローが宮本武蔵である。ところが世の中が平和になると、例えば元禄時代、男性は自らを飾り立てた。女装をする男性もあらわれた。

女性にとっての「男らしさ」の定義は何だろうか。一言でいえば、自分および家族をしっかり守ってくれることである。戦いの時代には、外敵と戦う能力が必須となる。一方で、平和な時代では、戦い能力を誇示してすぐ喧嘩をする男性は、決して男らしくない。むしろ優しさが男の条件となる。

草食系の男性が平和の象徴であるとすれば、僕はそれを評価したい。近い将来、肉食系が持て囃されるようになったら気をつけた方がいい。戦争が近づいている足音かもしれない。一方で、地球環境の悪化も含めて、世界はこれから厳しい時代が来る。その時代の男らしさとは何だろうか。