オンリーワンとナンバーワン 2012.02.12-02.18

スポーツ選手はナンバーワンを目指す。オリンピッの金メダルが その頂点となる。アーティストはオンリーワンであることに誇りを持つ。他人の作品を改良しても評価されない。科学技術の研究者は、もともとどちらなのだろう。

ノーベル賞が頂点である分野の研究は、ナンバーワンを目指しているように見える。一方で、真に独創的な研究はオンリーワンから始まる。もしかしたら、ナンバーワンも、最初はオンリーワンだったのかもしれない。それを忘れるとナンバーワンにはなれない。

オンリーワンを日本語に訳すと「一人ぼっち」。誰からも評価されない孤独に耐えることができなければオンリーワンになれない。ナンバーワンは、トップに立つことによって社会からもてはやされる。社会的な評価を目的として生きようとしたら、オンリーワンには絶対になれない。

社会はオンリーワンが大切であると言いながら、実はナンバーワンしか認めない。競争と評価こそが進歩の源であると信じている人には、ナンバーワンしか意味を持たない。 誰もがオンリーワンになったら人を序列化できない。序列をつけることで人を評価する社会ではオンリーワンは生まれない。

ナンバーワンがもてはやされる理由の一つは、評価尺度を数値化してランキングしやすいからだろう。オンリーワンには客観的に数値化できる評価尺度はなく、かつ多様である。オンリーワンを評価するには、目利きが必要となる。数値だけでランキングする社会では目利きは育たない。

公的な研究費は、税金で賄われているという理由で、配分に際して客観的な評価を専ら要求する。評価結果は内容でなく、数値やSABCDなどの記号で序列化される。それではオンリーワンの新たなパラダイムを生む独創的な研究は生まれない。長い目で見れば税金の無駄づかいとなりかねない。

オンリーワンは、最初は一人だけであっても、みなが追随すればナンバーワンになれる。一方で、一生オンリーワンで終わることもある。それを超越しなければ、真のオンリーワンにはなれない。オンリーワンかナンバーワンか迷っているうちは、オンリーワンになれない。