入院 2012.03.18-03.24

簡単な検査入院はあったけれども、実質的には生まれて初めての本格的な入院。わずか2週間弱だったけれども、僕には貴重な体験だった。この歳になると、入院生活も面白い。これからの人生、まだ色々なことがあるに違いない。すべてが人生勉強。また少し大人になった。

病院では、入院患者は王様だ。僕の場合、病室をでるときは必ず車いすという専用車と、看護師あるいはヘルパーという随行者がついた。どのような無理でも聞いてくれる。みな優しい。長い人生の中で、これほど大切にされたことはあっただろうか。しばしの幸福感に浸る。

病院では、入院患者は従順な召使いだ。あるいは奴隷だ。医師と看護師の命令には絶対服従しなければならない。反抗すると自分の命が危ない。ここでは服従のみが、自らが生きる道となる。

病院では、看護師さんはみな優しい。笑顔がいい。顔もチャーミングだ。マスクをしているからそう見えるのではない。やはり職業が顔をつくるのだろう。入院して心細くなっている患者の気持ち、それを看護師さんは理解しているから、みな素敵な顔をしているのだろう。

病院で、構音障害のリハビリという勝手な理由をつけて、魅力的な看護師さんに何かと話しかける。長くそばにいてもらうように、嫌われるのを覚悟で引きとめを図る。でも面白い話をして気を牽こうとすると、とたんに構音障害がでる。惨めな気持ちになる。

病院では、生と死が隣り合わせで身近にいる。深夜に急に廊下を小走りする足音がして、緊張した雰囲気が伝わると、病室で聞き耳をたてる。そして祈る。みな何も言わないけれども、自分の死と対峙している。生の大切さを噛みしめている。

入院すると本当に多くの方から温かい見舞いと励ましをいただく。昔の友人からの久しぶりの便りも届く。あらためて人のつながりのありがたさ、大切さを痛感する。気づかせてくれた入院に感謝。入院のきっかけになった病いに感謝。すべてに感謝。