シワ 2012.05.06-05.12

顔のシワは、表情筋によって顔の皮膚が動くときにできる溝が、肌に固定されたものである。たったそれだけなのに、どうして女性は気にするのだろうか。目尻にカラスの足跡ができただけで、どうしてそんなに大騒ぎするのだろうか。

顔のシワは、老化の象徴と思うから、それを忌み嫌うのだろうか。シワは20代後半から顔にできる。その年代はまだ老化とはほど遠い。それとも、女性は20代前半までがピークで、それから後は老化なのか。誰がそう決めたのか。

ある外国の女優の名セリフ「私のシワは努力して手に入れたもの」。欧米ではシワは女優の勲章ともされる。このような気持ちになることは普通の人には難しいかもしれないけれども、それは人生とは何か、美とは何かを考えるヒントにはなる。

もし70才にもなって、顔にまったくシワがなかったらどう見えるだろうか。マスメディアは持て囃すかもしれないけれども、僕には正直言って不気味に見える。不自然に見える。生き方がともなっていなければ、この人はそのことだけに命をかけているのではと思ってしまう。

シワもまた、顔の美の重要な要素だ。美しいシワと醜いシワがある。人にいい印象を与えるシワと、そうでないシワがある。美しいシワは、その人の人間性を表現する。相手に安らぎを与える。

シワを嫌うのは、若いときの自分が一番いいと思っているからだろうか。でも、過去の栄光ばかりにすがるのは寂しい。未来に目標を持った方が、はるかに人生が楽しい。僕は女性が美しくあって欲しいと思っているけれども、決して後ろ向きではなく、前向きに美しくあって欲しい。

「美しいシワを人生の誇りとしよう」。これはあるとき戯れにつくった顔訓の10箇条目である。しかし、これは女性には評判が悪かった。「そんなことわかっているけれども無理よ」。シワの問題は、理屈を通り越して、女性にとって深刻であるようだ。