平均顔 2012.08.26-09-01

平均顔という画像処理技術がある。顔の形や皮膚の色を平均するので、整った顔が合成される。個々の顔は、色々な方向に歪んでいるので、平均顔は歪みを打ち消しあって、形は左右対称になる。肌もすべすべになる。一見、魅力的になる。

平均顔がなぜ魅力的なのか。これには色々な議論がある。初期の頃は合成された平均顔がぼけていて、ぼけている顔はなぜ魅力的かという議論と区別できなかった。それはそれで面白い話題を提供しているけれども、きちんと議論をするためには、平均顔を精密に作成する技術の進歩が必要であった。

平均顔はバランスがとれていて健康的である。健康な子孫を残すために、健康な配偶者が好んで選ばれる。さらに平均顔は均整がとれているから、理知的な印象を与える。どこにでもいそうだから馴染みがある。安心できる。それが平均顔の魅力につながっているとする説がある。

マスコミでも、顔の美の秘密は平均顔にあるのではと話題になった。なぜか僕も専門家?として駆り出された。でも僕は、平均顔は魅力的だと思っていない。真面目すぎて個性がない。つまらない。そう答えたら、テレビの番組での僕の出演はボツになった。

顔の魅力は、対称的な平均顔が一つの基準となるが、それだけではない。それに、その人の固有の非対称性をいかに付け加えるかで決まる。その非対称性が個性となる。魅力的な生き方をしている人には、魅力的な個性がある。

平均顔の研究は、実は平均が目的ではなかった。顔の個性を知りたかった。様々な個性が作る空間の原点、それが平均顔だった。それぞれの顔が、その原点としての平均顔からどうずれているか、そこに興味があった。

平均と個性、なぜか社会は平均のほうに関心をもつ。科学もそうだ。しかし、平均はともすれば差別に結びつく。平均はステレオタイプ的な見方を助長する。人はそれぞれ違う。それを忘れると、平均顔の研究は危険なものとなる。