病んで一年 2013.03.10-03.16

昨年3月にちょっとした病いをしてから一年がたった。生まれて初めての入院、そしてその後の療養、それは僕にとっていい経験だった。この歳になって初めて学ぶことも多かった。文字通り生まれ変わったような気もした。

病んで一年、病名は、橋という脳幹におきた脳梗塞。命にもかかわる危険な部位だったけれども、これを脳梗塞と呼んでは他の患者さんに申し訳ないと思うほど、症状は軽かった。運動障害や言語障害はほんの一時期で、いまでは普通の生活ができている。

病んで一年、もちろんそれなりの後遺症はある。それをリストにして尊敬する専門の先生に相談したら、あっさり一言。「これはすべて老化現象ですね。心配することはありません。普通の老人になった。それだけです」。それはそれで、僕としてはショックだったけれども。

病んで一年、生活のリズムは、それ以前よりもスローになった。レースカーから軽自動車に乗り換えた気分。そのような表現をしたこともある。そのうちに自転車、徒歩、そして車椅子になるかもしれない。でも、それもなかなか楽しい。それぞれでしか味わえない光景がある。

病んで一年、毎日の生活そのものが感謝になった。朝起きたとき、まずは生きていることに感謝する。夜寝るとき、今日一日元気でいたことに感謝する。今日は何ができたではなく、今日という日があったことに感謝する。

病んで一年、いわば命拾いをさせていただいた。拾った命をどう使うか。それは人それぞれだろうけれども、僕はせっかくの命拾いなのだから、いままでとは違った自分を楽しく生きてみたい。それが何であるかはまったくの五里霧中であるけれども。

病んで一年、もっとも感謝すべきは、僕が一人で生きているのではなく、多くの方々に支えられている。それを実感したことであった。本当に多くの方に心配をかけた。ご負担をかけた。本来は自分がすべきなのに代わっていだだいたものもある。すべてに感謝。ありがとう。