ミーム 2013.04.14-04.20

ミームという遺伝の単位が提唱されている。それはヒトのDNAに書かれている生物学的な遺伝子ではない。いわば文化の「遺伝子」とも言えるものである。ヒトは文化を次の世代に伝えることができる。その文化の情報伝達の単位をミームという。

生物学的な遺伝子によるヒトの進化のスピードは、極めて遅い。人類が生まれてからほとんど進化していない。それに対して、文化の「遺伝子」であるミームによる「進化」は速い。ある世代で獲得した文化がそのまま子孫に伝わるからだ。人類はヒトから人になることによって大きく「進化」した。

動物は生殖によって次の世代に遺伝子を残す。その機能がなくなったら死ぬしかない。これに対してヒトは、生殖機能がなくなった老人になっても長生きする。それはミームという「遺伝子」によって文化を子孫に残すという、重要な役割が老人にあるからだ。

結婚しない男性、女性が増えてきた。結婚しても子どもがいない夫婦もある。生物学的な遺伝子は残せない。でも悲観する必要はない。ミームという文化の「遺伝子」は立派に残せる。それは次の世代に着実に伝わっていく。

人は名声や名誉を求める。たとえば科学者は、死んだ後も自分の名前が残ることを願う。それはミームを残そうとする人の本能である。そのような立派なミームでなくても、自分が生きた証(あかし)は、家族や友人の記憶に残る。それもミームである。

文化の「遺伝子」とも言えるミームは、比喩的に言えば、生物学的な遺伝子と同じように、異なる種(文化)が交差すると進化が起こる。ときには突然変異も起こす。ミームにはウィルスもある。がん細胞もある。もしそれが人の歴史そのものを食い潰すようになったら、人類は滅亡する。

文化の「遺伝子」が育つ環境、特に美しい文化が育ち、世代を超えて伝わっていく環境とは何だろうか。いかにすれば美しいミームを後世に残すことができるのであろうか。そのために、ささやかながら、自分に何ができるのであろうか。何をしたらいいのだろうか。

※今週は文化の遺伝子と呼ばれているミームについてつぶやきました。ミームは厳密には遺伝子ではありません。遺伝子のようなものです。遺伝子のようなものを単に遺伝子と呼ぶときは「遺伝子」とかっこ付きで記しました。