ことづくり 2013.04.28-05.04

最近の標語の一つに「モノからコトへ」がある。「ものづくり」に対して「ことづくり」なる言葉も登場している。「ことづくり」とは何か。そもそもコトとは何か。その定義は難しい。コトは目に直接見えないからだ。誰にでも見えるものではないからだ。

ことづくりは、経済界では顧客重視のサービスづくりを意味する。IBMは、サービスをキーワードして見事にモノからコトへの転換を図った。考えてみれば第三次産業は、すでにことづくりだった。モノからコトへは、その背景に産業構造の変化がある。

ことづくりは、モノを無視することではない。むしろ、ものづくりが目指すべき方向を与える。それによってものづくりは本来の姿になる。一方で、ものづくりの発想で、単にモノをコトに置き換えても、ことづくりにはならない。そこには発想の転換が必要となる。

ことづくりは、価値づくりである。いまやモノは価値の時代になった。たとえば、アパレル産業は、かつてはナイロン、ビニロンなどのモノの新しさで売れたけれども、いまではむしろブランドが尊ばれる。機能よりも感動がキーワードとなる。

ことづくりは、仕組みづくりである。コトを起こすためのインフラづくりである。プラットフォームづくりと言ってもいいかもしれない。仕組みがあれば、コトは増殖する。たとえばインターネットは、コトが自ら増殖するプラットフォームとしてある。

ことづくりは、関係づくりである。モノとモノの関係、人と人の関係、人とモノとの関係、さらには文脈と呼ばれる関係、時間的な関係もある。モノが点としてあるとすれば、コトは線としてある。さらには面としてある。そこから何を引き出すか。それがことづくりの課題となる。

ことづくりは、未来づくりである。私たちの未来の生活や社会の創造である。モノが売れなくなったから、次はコトを売ればいいというものではない。そこにはメッセージが必要になる。ビジョンが必要になる。新たな価値観が必要になる。