大人 2013.06.02-06.08

子どもがしなければならない、もっとも大切な役割は何か。それは大人になるための準備をすることだ。いま、大人になれない子ども、さらには大人になれていない大人が増えているような気がする。そもそも、大人になるということは、どういうことなのだろうか。

大人になるとは、一人で生きる力を身につけること。親はいつまでも子どもと一緒にいることはできない。いつまでも子どもを守ることはできない。子どもの自立には、子の親離れだけでなく、親の子離れが必要になる。それができたときに、子どもは大人になれる。

大人になるとは、免疫力を身につけること。母親から引き継いだ免疫力は、生まれて半年で失われる。子どもはさまざまな雑菌に感染して免疫力を身につける。それは一時的に危険であるけれども、すべての危険を取り除いた清潔至上主義では、免疫力がつかない。子どもは大人になれない。

大人になるとは、さまざまな試練に対する抵抗力を身につけること。心の免疫力と言ってもいい。人間関係の葛藤に対する免疫力、挫折に対する免疫力。それは試練に自ら立ち向かうことによって身につく。そこから逃げていたら、子どもは大人になれない。

大人になるとは、社会で生きる力を身につけること。子どもが集団でおこなう遊びは、そのためのシミュレーション、トレーニングである。そこには、強者もいれば弱者もいる。それによって、社会で共に生きる人間力が身につく。遊ばなければ、子どもは大人になれない。

大人になるとは、他者の心を理解できるようになること。自分以外の他者への想像力を身につけていること。それができないと、自分中心、自分勝手、他人の心が読めないということになる。それを子どもっぽいという。いま子どもっぽい大人が多すぎる。

子どもは、さまざまなことを経験して大人になる。もちろん、大人になることによって失うものもある。子どものときにあった感性を失う。そして夢を捨てる。大人になるとは何かを考えることは、実は大人自身が、いまの自分をもう一度見直すことでもある。