鼻 2013.06.30-07.06

人は自分を示すときに鼻を指さす。鼻は自分自身だ。もともと自という字は鼻を意味していた。でも鼻は、目や口に比べてあまり注目されない。女性のメイクの対象にもなりにくい。人の顔の中心にありながら、どこか控えめな鼻について、今週はつぶやく。

ヒトの鼻は動物に比べて高く見えるけれども、そうではない。口が引っ込んだときに取り残されたのだ。鼻には、外気を体内にいれる時に、適度な湿度と温度を与えるという役割がある。それにはある程度の鼻腔の大きさが必要となる。口が引っ込んでも、鼻は小さくなるわけにはいかない。

ヨーロッパ人の鼻はアフリカ人に比べて高い。寒冷地で冷たい空気を温めるために高い鼻が必要だったからだ。同じ寒冷地でも、モンゴルなど北方アジア人の鼻は低い。それは北方アジアがとてつもなく寒いからだ。飛び出ていると凍ってしまうから、鼻腔を顔の内側で確保して鼻が低くなった。

ヨーロッパ人とアジア人は鼻の高さが違う。それは文化にも影響した。日本では引き目カギ鼻がいいとされた。浮世絵でも鼻は小さく描かれた。一方で、古代エジプトやヨーロッパでは、横顔の鼻を強調した絵画が多い。コインの図柄もそうだ。日本では、鼻の形はほとんど注目されていない。

西欧では、男女の顔は鼻が大きく違う。男が高い。それもあってか、西欧では鼻を低くする美容整形が多い。女らしく見せるために、鼻を低くする。日本では逆だ。西欧の女性の顔にあこがれているから、鼻を高くする美容整形がもてはやされる。

日本人の鼻は、どちらかといえば、男女の差は少ない。それでも鼻の穴の大きさと形が違う。電車で座席についている時に、失礼ながら、前に立っている男と女の鼻の穴を、そっと観察するといい。男は大きく丸く堂々と開いている。それに対して、女の鼻の穴は可愛くて、その形も控えめである。

鼻を高くしていると、へし折られる。鼻っ柱の強い人は嫌われる。鼻の下が長い人は人格を疑われる。どうして鼻はそれほどまでに蔑まされるのだろう。鼻は顔の中心にあって、生きていくために大切な器官なのだから、もっと可愛がってあげてもいい。

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