講演の秘訣 2013.09.29-10.05 

僕のような教育関連の仕事をしていると、毎週の授業も含めて、人の前で話す機会が多い。半分引退しても、学会や団体からの講演の依頼はあまり減っていない。でも大勢の人を相手に話すことは本当に難しい。何か秘訣はないかと、講演のたびごとに模索する。

講演の秘訣は何か。長時間の講演は、ともすれば退屈な単調なものになってしまう。そこにはメリハリとリズムが大切である。ジェットコースターのように、いくつもの山あり谷ありを心がける。もちろんその山と谷も、一つのシナリオのもとできちんと意味を持たせる。

講演の秘訣は何か。間(ま)という沈黙の時間を意識して設ける。話していると、その沈黙の時間が長く感じられる。続けてすぐ話さなければと焦る。でも、聴いている方は、そうではない。適当に間があった方がいい。安心して余韻を楽しみながら聴くことができる。

講演の秘訣は何か。パワーポイントなどのスライドを用いた講演では、次の一枚に期待をもたせる。僕の小さい時に紙芝居があった。そこでは次を半分見せて、さっと前の一枚を引き抜く。そのタイミングが絶妙であった。僕の講演は紙芝居が手本になっている。

講演の秘訣は何か。一般向けの講演では、どこかで笑いをとる。どんなに真面目な講演でも、ときどき笑いをとったほうがいい。そうすれば居眠りをしている人も起きてくれる。でも、とりすぎてはいけない。講演自体の品格がなくなってしまう。その辺の加減が難しい。

講演の秘訣は何か。自分自身が感動することである。こちらが白けていては、いい講演ができるはずがない。講演の準備は早すぎてはいけない。直前の準備、たとえば前の晩の感動をそのまま翌日の講演につなげる。これはいつも直前まで講演の内容が確定していない僕の言い訳になっている。

講演の秘訣は何か。最後は居直ることである。大勢の聴衆の前では、当然緊張がある。実は僕は、若い時はどもり(吃音)だった。人前で話すときは緊張してどもった。それがなぜか人前で話す職業になった。居直る以外になかった。居直ったら、それなりに話せるようになった。