人類の勝利シナリオ 2013.11.17-11.23 

人類は生き残るのか、滅亡するのか。滅亡シナリオだけでなく、より積極的な勝利シナリオもある。人類はいま科学技術という強力な武器を手に入れた。これを駆使すれば、どのような危機に遭遇しても、それを乗り越えられる。最終的には人類は勝利するとするシナリオである。

科学技術は、もはや後戻りできない。科学者は知への欲求を捨てることはできない。技術者も同じだ。科学技術は前へ進む以外にない。一時的に問題が生じても、科学技術の力で、人類は必ずそれを克服して発展するだろう。科学技術の研究者の多くはそう信じている。

人類は、いま遺伝子を操作することによって、病そのものを克服しようとしている。例えばガンは、遠くない将来に完全撲滅が期待される。さらには老いと死のメカニズムが科学によって解明されれば、不老不死の永遠の命を手に入れることも夢ではない。

コンピュータは人よりも遥かに速い計算能力を持ち、その記憶容量もいまや人を凌駕しようとしている。人の脳の情報をすべてまるごとコンピュータにアップロードして、強い人工知能技術によってその能力を拡大すれば、人は文字通りスーパーマンになる。

地球の次は宇宙の時代だ。おそらく人類は、惑星を自らが住めるように改造して、宇宙全体にその居住空間を拡大していくだろう。惑星の改造計画はテラフォーミングと呼ばれる。火星に温室効果ガスを大量に散布して希薄な大気を厚くすれば、人類の生息に適した環境になるかもしれない。

人類が宇宙に進出するときは、遺伝子をその惑星に適した形に改造してもいい。人体も、地球上の生物のように炭素がもとでなくてもいい。その惑星に適した組成に人類を作り変えれば、問題なくその惑星で棲息できる。こうして、人類は宇宙全体に進出して、宇宙の独裁者となる。

科学技術の知によって賢くなった人類は、自らの遺伝子を改造し、脳と身体をサイボーグ化することによって永遠に生きる。しかし、それは果たして人類と言えるのか。少なくともホモ・サピエンスとしての人類は滅亡している。人類の勝利シナリオも、結局は人類の滅亡シナリオなのだ。