白目  2014.01.26-02.01

「白目を剥く」という言い方がある。驚いたり怒ったりするときに、目を大きく見開くことだ。「白い目で見る」という言い方もある。それは冷たい、悪意のこもった目つきだ。白目は黒目に比べてイメージが悪い。でも白目には大切な役割がある。

もともと目は丸かった。魚の目は丸い。両生類になって生物が陸にあがると、目に瞼ができた。眼球を湿らす必要があったからである。瞼ができると、上下の瞼に挟まれた隙間(眼裂)は横長になる。でもほとんどの動物は眼裂いっぱいに黒目があって、白目は見えにくい。ヒトだけ白目が目立つ。

白目があることは、実は動物にとって危険なのだ。白目があると、黒目の位置によって、いまどこに関心が向いているかがわかってしまう。関心の向きがわかれば、その動物をそれ以外の方向から攻撃すればいい。したがって、ほとんどの動物は、白目が目立たないようになっている。

動物において危険な白目は、ヒトでは重要な意味をもつ。ヒトは共同生活をする動物であり、そのためには互いのコミュニケーションが大切だ。そこではそれぞれが何に関心を持っているかを示す視線が本質的な役割を果たす。その視線は、黒目だけでなく白目があるから見分けられる。

ヒトは様々な道具を使う動物であり、遠くだけでなく、すぐ近くの手元も見る。手元で物を見るときは、首を動かすよりも眼球を動かした方が、はるかにエネルギー消費量が少ない。字を読んだり書いたりするときも、眼球が活発に動く。首を固定して眼球が動けば、白目が目立つようになる。

マンガやアニメのキャラを描くときは、白目が重要だ。大きく縦長の白い丸のどの部分に瞳を置くかによって、表情が豊かになる。ドラえもんの目の魅力の一つはそこにある。ミッキーマウスも、もともとは白目はなかったけれども、あるとき白目がついた。それで人気者になった。

白目はなぜ嫌われるのだろう。なぜ冷たい印象になるのだろう。それは白目に責任があるのではなく、相手への気持ちの問題だ。人を見下すときや斜に構えて軽蔑するときは、白目は冷たくなる。逆に相手に魅力的な流し目を送れば、白目も色目になる。