「よろしく」は便利な言葉だ。とりあえずよろしくと言っておけば、用が済んでしまう。受け取る方も、それほど重荷に感じない。お願いしているようで何もお願いしていない。今週は「よろしく」をテーマにしてつぶやく。どうぞよろしく。
「よろしく」は、以心伝心を前提とする。お願いしたいことは言わずともわかっているでしょうという気持ちがある。よろしくの意味を理解するには、空気を読むことが大切である。さらには、相手のことを本当によくわかっている必要がある。よろしくは難しい。
「よろしく」には、あなたがお好きなようにとの意味がある。一方で、それが自分にプラスになることを期待している。相手を立てている振りをしながら、実は自分に利益を誘導する巧妙な言葉だ。よろしくを使いこなせる人は、言葉の達人、人生の達人と言えるかもしれない。
「よろしく」は、手紙やメールの末尾の常套句だ。Best regardsと同じ意味で使う。Best regardsのもともとの意味は、「(相手に)尊敬の念を持って」のはずだけれど、それが「(自分のために)よろしくお願いします」になる。なぜそうなるのか。単なる文化の違いなのだろうか。
「よろしく」をそのまま一つの英語に訳すことは難しい。単なるpleaseもあれば、thank you in advance の意味もある。新人は挨拶代わりにHow do you do? の意味でも使う。一つの言葉に色々な意味を持たせて活用する。それが日本語なのだろう。
「よろしく」は曖昧な言葉だ。何事も曖昧さを嫌う人は、使うことを避けた方がいい。特にビジネスでは使わない方が無難かもしれない。一方で、こんなに便利な言葉を使わないのは損だとも思う。結局は、人生観の問題なのかもしれない。
せっかく「よろしく」をテーマにしてつぶやいているのだから、ここで連発しよう。初対面の人に「よろしく」、よく知っている人に「よろしく」、全然知らない人にも「よろしく」。これからそう長くない人生だけれども、最後まで「よろしく」。そして天国(地獄?)でも「よろしく」。