冬になると、マスクをつけている人が目立つ。マスクは、外からの風邪のウイルスや花粉、そして最近話題のPM2.5を防ぐために効果があるとされる。市販のマスクは、その性能を競っている。実際には、顔とマスクのすき間から混入することの方が多いらしいけれども。
マスクは、クシャミや咳を周辺に撒き散らすことを防ぐ。これは、風邪をひいているときの、周りの人へのマナーでもある。美術館の学芸員は貴重な美術作品に向うときはマスクをつける。自分のためではなくて、相手への思いやりとしてもマスクがある。
マスクには顔を隠す効果がある。朝、メイクをする時間がなくても、とりあえずマスクをすれば、ノーメイクでも外出できる。外出先でゆっくりメイクをすればいい。最近の女性のマスクは、この理由が多いとも聞く。本当なのだろうか。
マスク美人という言い方もあるらしい。夜目遠目笠の内と同じように、顔は隠している方が美人に見えるという効果がある。顔のVラインやEラインの見え方をマスクによって補正することもできる。マスク業界では、美人に見える「だてマスク」がビジネスになっている。
いまマスク依存症が増えているらしい。マスクによって人の視線を軽減できる。しかし、一方でマスクをした顔は、その時点で顔ではなくなってしまう。顔は、見る・見られる関係のなかにある。その顔によるコミュニケーションが失われてしまうと、おおげさに言えば、人とは何かが問われることになる。
仮装用のマスクは仮面と呼ばれる。宗教的な儀式では仮面をつけることによって神と一体になる。演劇でも、仮面をつけてその役柄と人格も含めて一体化する。マスク(仮面)は、自分自身の人格を変える可能性がある。もともとパーソナリティは、仮面(ペルソナ)に語源がある。
顔を隠す文化もある。イスラムでは、結婚している女性は顔を隠す。日本でも顔隠しの文化があるという指摘もある。ネットでは、顔を隠したコミュニケーションが普通になっている。マスクは、これからどのような顔の文化を形成するのであろうか。顔学の観点からも、マスクから目を離せない。