宇宙の誕生 2016.02.28-03.05

つい先日、重力波の直接検出に、アメリカのチームが成功したとのニュースが流れた。重力波の検出精度が上がれば、宇宙が誕生したときの状況を直接観察することができる。これは画期的なことらしい。なぜそうなのか。そもそも宇宙はどのようにして誕生したのか。

宇宙の誕生を説明するキーワードは「相転移」らしい。液体としての水は温度が上がると気体、下がると固体になる。それが物質の相転移だ。それと類似の空間の相転移が宇宙誕生直後に起きた。宇宙は誕生したときは途轍もなく高温だった。次第に冷えて相転移が何度もおこり、いまの宇宙になった。

宇宙の形成には力(相互作用)が必要になる。いま4通りの力が知られている。「重力」、「電磁力」、そしてその電磁力よりも「強い力」と「弱い力」だ。宇宙の温度が高いときは、これらは同じ力であった。温度が下がるにつれて相転移が繰り返され、力は4つに分かれた。

138億年前に宇宙が誕生したときは、宇宙は一点に凝縮されていた。その宇宙は誕生直後に急激に指数関数的に膨張した。インフレーションと呼ばれている。そのとき宇宙の温度も急激に下がり、相転移にともなう大量の転移熱を発生した。これがビッグバンである。

宇宙の温度がさらに下がると、さらさらだったヒッグス粒子が粘っこくなり、それによって、それまでは光速であったさまざまな粒子の運動が遅くなった。それは粒子が質量を獲得したことを意味した。宇宙が誕生してから10の12乗分の1秒後(1兆分の1秒後)のことである。

粒子に力が働くようになると、それらが結合して物質が誕生する。まずは強い力によってクオークが結合して陽子と中性子が生まれ、さらにはそれらが結合して原子核が生まれた。その後少したった38万年後に、それまでは自由だった電子が、電磁力によって原子核を回るようになった。原子の誕生である。

原子核に電子が拘束されると、それまで空間の電子に運動が邪魔されていた光子が自由になって、宇宙が晴れ上がった。いま我々が観測できる限界は、この宇宙誕生38万年後に発生した光波であり、それよりも前は重力波に依らなければならない。その重力波の検出が、つい先日初めて可能になった。