重力 2016.03.06-03.12

いま私たちは重力があるから地球に立っていられる。重力があるから地球が太陽を回っている。月が地球を回っている。重力は目に見えないけれども、物理現象の中で一番身近な存在だ。ところが、物理学では、それがほとんどわかっていない。最後の難問なのだ。

ニュートンは、林檎が木から落ちるのを見て重力を発見した。それなら僕にも発見できると小学生のとき思ったけれども、ニュートンの発見はそれだけではない。林檎が落ちるときの力、地球が太陽を回るときの力、どちらも同じだと気づいたから大発見なのだ。残念ながら僕はそれには気づかなかった。

重力は質量に対して働く。アインシュタインは、質量があると空間が歪み、その空間の歪みが重力を生むとした。いわゆる一般相対性理論である。アインシュタインが日本に来たとき、その講演は大人気だったらしい。相対する性(セックス)の理論と勘違いした人が多かったという話があるけれども。

力は重力だけではない。磁石に働く力は電磁力だ。原子の中では強い力と弱い力が、素粒子に作用している。宇宙が誕生したときは、それらの力は一つで、次第に分かれていった。どのようにして分かれたのか。他の力については理論があるけれども、重力も含めた超大統一理論が最後に残された未解決問題だ。

重力の強さは、他の力(電磁力、強い力、弱い力)に比べて、極端に小さい。その代り遠くまで届く。電磁力も遠くまで届くけれども、プラスとマイナスがすぐ打ち消されて中和され、範囲が限定されてしまう。結果として宇宙では重力だけが働く。重力は、力は弱くても、宇宙の支配者なのだ。

力は粒子によって伝えられている。例えば電磁力は、物理現象としては電波や光と同じだから、力を伝える粒子は光子だ。重力を伝える粒子はグラビトン(重力子)と名付けられている。それは存在が予言されているだけで、まだ見つかっていない。我々の身近に確かにあるはずだけれども。

素粒子は拡大すれば「ひも」のようだとする超ひも理論(超弦理論)がある。ほとんどの素粒子では、そのひもは開いていて、その端っこがこの宇宙にくっついている。重力だけは別だ。閉じたひもになっていて端がないから、この宇宙に拘束されることなく自由に飛び回っている。だから重力は面白い。