私的「研究者の心得」 2016.08.21-08.27

長い研究者人生で溜まった資料を整理していたら、数十年前に記したメモがでてきた。題してそのものずばり「研究者の心得」。僕自身がそれを実行できたかどうかは別として、初心を忘れないために改めてここにメモしておこう。

「一流の研究者と接する」 研究者としてまずは新鮮な刺激を受け続けることが大切である。一流の業績を挙げた研究者には、必ず学ぶべきことがある。研究の内容はもちろん、研究態度、人との接し方、さらには人生観や世界観に至るまで、すべてが学びの対象となる。

「顔を覚えてもらう」 研究者は広く顔を覚えてもらうことが大切だ。そのために例えば学会を活用する。発表すべき研究があればもちろんのこと、なくても質疑応答に積極的に参加する。さらには懇親会を通じて顔見知りになる。学会の雑用も、人脈を広げる好機であると考えれば、励みになる。

「自分でしかできない研究をやる」 僕自身は“○○も”ではなく、“○○が”やっている研究をやりたいと常々思っていた。そのためには競争がしんどい研究はしない。世界中の優秀な研究者との競争は、精神衛生上よくないし、結局は誰かがやることを、わざわざやる必要もない。

「新しいテーマは5年は頑張る」 何事も本気にならなければ結果はでない。新しいテーマは5年間は続ける。5年間感動が続けば、そのテーマには何かがある。本物であると考えていい。逆に5年やったら見直しをすること。感動がなくなったらやめたほうがよい。

「火事場の○○力に期待する」 どんなに難しい課題でも、切羽詰まれば、何らかの解決策を思いつくものである。火事場に自分から身を置くことは結構つらいけれども、研究とはそういうものだと割り切る。その修羅場をも楽しむことが、研究者には要求される。

「評論家的な専門家にならない」 専門家には2種類ある。評論する側の専門家と評論される側の専門家。前者は国内外の動向に精通して、マスコミにもよく登場する。一方の後者は評論に値する業績をだしている専門家だ。研究者として評論される側の専門家になる。それが僕が夢見た研究者像だった。