私的「研究者の心得」補遺 2016.08.28-09.03

「直観を大切にする」 研究者として、面白いと思った直観を大切にしたい。まずは直観に基づいて研究を進める。なぜその研究が重要であるかの論理的な説明は、論文を執筆するときに後付けすればいい。逆に言えば、直観力を磨くことが研究者の命になる。

「アメリカを追わない」 アメリカを追えば効率的に研究を進められる。でも僕は逆にアメリカの後追いをしないことを心掛けた。こちらが先の研究であっても、アメリカが始めたらその次を考える。あるいはやめる。これは結構しんどいけれども、そのくらいの気概を持たないと、いい研究はできない。

「若手に喜ばれる研究をする」 研究をマスコミでもてはやされると、いい研究をしたかのような気になる。しかしこれは危険だ。マスコミ相手でなく、これからの若手研究者に喜ばれる研究をする。マスコミは現在の消費しかしないけれども、若手には未来がある。

「文献を読みすぎない」 研究者として文献調査は当然である。一方で、研究を始めるときに文献を読み過ぎることもよくない。まずは自分の頭で考え、その後で関連する文献を徹底的に調査する。先に誰かが研究していることを発見しても気にしない。自分の頭で考えたプロセスが重要なのだから。

「研究にめりはりをつける」 大学院の修士は2年間、博士は3年間ある。その後の研究者人生も、いつも同じペースで研究しているわけではない。ほとんどの時間はひたすら準備を続ける。そして一気に集中して成果をだす。持続力と集中力、その双方が要求されるのが研究という営みだ。

「研究発表にコストと時間をかける」 研究は世界中の研究者に知ってもらわなければ意味がない。例えば一億円かけた研究も、最後の段階で、研究を魅力的にアピールするための時間とコスト(海外発表の旅費も含めて)を節約しては、研究そのものが無駄になってしまう。

「論文を目的としない」 研究者にとって論文執筆は必須であるけれども、論文の数のみを競うようになると、本末転倒になる。論文は他の研究者とのコミュニケーション手段、そして次の研究につながる重要なステップであって、決してそれ自体が目的ではない。