海の向こうにある大国を訪れるたびに思うことがある。この国は果たして進んでいるのだろうか。それとも遅れているのだろうか。国際的に決定的な影響力のあるこの国の2面性が、近未来の世界の見通しを悪くさせている。
終戦直後に育った世代にとって、アメリカは憧れだった。テレビで見るアメリカの家庭には最新式の冷蔵庫と洗濯機があって、世界一のママと、何でも知っているパパがいた。まさにアメリカは未来だった。ひたすらアメリカの後を追うことが、日本が進むべき道であった。
2度の大戦で富を蓄えたアメリカは、戦後はグローバリズムの名の下に、自国の基準を世界標準として世界に君臨した。東西冷戦の結末を資本主義と自由経済の最終勝利として、「歴史の終わり」と宣言したアメリカの哲学者もいた。本当にそれはアメリカの最終的な勝利だったのだろうか。
いまのアメリカ人の生活は、人と地球に優しいとはとても言えない。とんでもないカロリーの食生活は、アメリカを肥満大国にしてしまった。すべてが大量消費で、空調は効き過ぎだし、シャワーの湯量も制御できない。世界がアメリカを目標にしたら、確実に人類はおかしくなる。地球もおかしくなる。
アメリカには多様な顔がある。ニューヨークなどのビジネス街は、決してアメリカのすべてではない。いまのアメリカには進化論を信じていない人が多数いる。自らを守るために銃を手離せない人も多い。それもアメリカであることをしっかり認識しないと、アメリカの真の姿は見えてこない。
今回の大統領選挙は、いまのアメリカの半数の人々が自国中心主義、排外主義を支持していることを世界に示してしまった。世界はこれからグローバル化ではなくて、その反対のナショナリズムの時代になるのだろうか。アメリカは未来を先取りしているのだろうか。
もちろんいまでもアメリカに学ぶ点は数多くある。依然として世界のリーダーだ。一方で、諸行無常、盛者必衰。この栄光が永遠に続くとは考えにくい。アメリカの終りが世界の終わりにならないように、その次の時代へ向けた用意をする。その時期がそろそろ来つつあるような気がしてならない。