経済成長 2016.11.13-11.19

1972年にローマクラブが「成長の限界」と題する報告を出している。有限な地球ではこれまで通りの成長は続かないと、未来に対して警鐘を鳴らした報告であった。最近の国際社会を見ると、少なくとも経済に関しては成長の限界がすでに来ているのでないか。そんな気がしてくる。

いま世界経済は停滞している。ほとんどの先進国で、若者を中心に失業者が増え、インフレ率は2%をはるかに下回わり、長期金利は過去最低水準で推移している。経済成長が限界に達しているかどうかは別として、その停滞は一時的なものではなく、これからも続くと考えた方がいい。

経済が成長している間は、社会に余裕がある。雇用も増え、さらなる労働力を確保するため外国からの移民に対しても積極的になる。富の再分配もできる。福祉も充実する。国際分業によって生産性が高まるから、グローバル化が叫ばれる。経済成長が止まるとこれが逆になる。

経済の成長が止まると何が起こるか。ゼロサムゲームとなるから、一定のパイの配分の問題になる。そのもとで自由競争を強めると、結果的に勝ち組と負け組が生まれ、格差が深刻になる。雇用が減少するから、職を奪う移民に対しても不寛容になる。国際的にも自国中心主義になる。

最近の欧米の動きを見ると、経済の成長が終わって、そのひずみが様々な形で露呈しているように思える。世界は必ずしもいい方向になっていない。それが世界の破滅の前兆なのか、それとも新たな時代へ向けた産みの苦しみなのか、いま多くの人が固唾を飲んで見守っている。

経済成長は、一言でいえば生産と消費の増大である。生産が増大するためには、まずは消費が奨励される。僕は贅沢をせずに慎ましく生きることが理想だと思うけれども、国民がすべてそのような生き方をしたら、経済は破綻する。経済は慎ましい生き方を否定する。

近代という時代は成長を前提として発展してきた。その前提が崩れると極めて不安定になる。経済システムがその典型だ。そろそろ成長がなくても安定に機能する経済システムの構築を真剣に考えた方がいい。経済学者はそれは不可能だと言うかもしれないけれど。