直接民主制 2016.11.27-12.03 

一般に直接は間接よりもいいとされている。その方が文字通り第三者を介さずに直接的に参画できるからだ。でも本当にそうだろうか。少なくとも政治に関する限り、直接民主制よりも間接民主制の方が優れているのではないか。僕にはそう思えてならない。

言うまでもないことだけれども、直接民主制は、代表者などを介さずに住民が直接政治に意思を反映させる制度、間接民主制は、選挙などによって代表者を選出し、意思決定をその代表者に信託する制度だ。その代表者を信用できなくなると政治不信となり、人々は直接民主制を望むようになる。

直接選挙で選ばれた首長は、一般に強い権限を持つ。自らの独自性を主張するために、前任者の業績を否定しがちで、政治の連続性が必ずしも保てない。それが硬直した体制の変革に結びつけば、その首長は喝采を浴びるが、一方でそれが独裁者を生むこともある。

国民投票は、国民が政治的な意思決定に直接参画する仕組みであるが、それは一方で権力者に利用されやすい。国民投票を示すフランス語「プレビシット」には、権力者が自らの統治を正当化するために民意を利用するという否定的な意味がある。

国民投票を都合よく利用したのがナポレオンとヒトラーだ。ナポレオンは国民投票をおこなって、皇帝となった。ヒトラーは、自らの総統就任も含めて、国際連盟脱退、オーストリア併合にあたって、いずれも国民投票によって追認させて、民衆の支持を演出したとされる。

直接民主制は、言うまでもないことであるが、その時々の感情に支配されやすい。政治も感情にアピールするようになり、いわゆるポピュリズムが横行することになる。さらに言えば、直接民主制は、将来の見通しなしに、単に政治不信の捌け口になりやすい。

古代の都市国家では広場で皆が議論することができた。国が大きくなると、すべての国民が一堂に会することができなくなり、仕方なく間接民主制になったとされる。ネットでは実質的に一堂に会して議論できる。ネットの時代は再び直接民主制となって、そのもとで政治が動くようになるのであろうか。