スケッチブック 2017.01.15-01.21

僕は紙版のスケッチブックをいつも持ち歩いている。絵を描くためではない。ほとんど文字だけのスケッチブックだ。パソコンの時代になっても、スマホの時代になっても、これだけは手放せない。僕にとって最強のモバイル思考ツールだ。

ノートブックパソコンが普及し始めた頃、モバイル大革命と題したシンポジウムがあった。ノートブックの利便性を話すつもりが、その数日前にハードディスクが破損して、慌てて紙版のスケッチブックを購入した。それが気に入って、講演のタイトルは「ノートブックからスケッチブックへ」になった。

スケッチブックは、ノートブックやスマホよりも遥かに軽い。電池切れの心配もない。数百円あれば買えるから経済的だ。B6サイズからA3サイズまで、さまざまな大きさを用途に応じて選ぶことができる。僕はA4あるいはB4サイズに加えて、気楽なメモ用にB6サイズを愛用している。

スケッチブックには罫線がないのがいい。罫線がないから時系列で順番に表現する必要がない。字の大きさも自由だ。適当に間(ま)も表現できる。どこから書き始めてもいい。図も自由に挿入できる。そのページだけ切り離すこともできる。ネットにつながっていないから、雑念に惑わされない。

僕は思考するときは、まずはレイアウトから入る。思いついた言葉をとりあえず並べて、それを線で結ぶ。あるいは複数の言葉の周りを線で囲う。こうして全体を俯瞰する。俯瞰した上で、そこに論理やシナリオを発見する。このような思考法には、スケッチブックが似合う。

スケッチブックは、メモをとるときにその場の空間を表現できる。例えば会議では、発言しているそれぞれの人が、前後左右どこにいるかをそのまま反映することができる。右の人の発言は右に、左の人の発言は左に記せばいい。僕が発言したこと、これから発言したいことは真ん中だ。

スケッチブックに向かうときは、なぜかリラックスした姿勢になる。足を組んで、その上にスケッチブックを何気なく乗せる。僕はその姿勢が好きだ。ノートブックパソコンを覗き込む姿勢よりはるかにかっこいい。姿勢によって、思考の中身が変わる。かっこいい姿勢をすれば、かっこいい思考ができる。