無人島に一つ 2017.02.19-02.25

無人島に一つだけ持っていけるとすればそれは何ですかという問いかけがある。このように言い直してもいい。毎日の日常のなかでもしも○○を失ったら、もはや生きていけない。あなたがそう思うものは何ですか。あなたは何に執着しますか。

これを失ったら生きていけない。あなたがそう思うものは何だろうか。名誉、お金、地位・・・。でもそれらは無人島ではまったく役に立たない。しかもそれらは移ろいやすい。ある日突然に失われることもある。そのようなものに振り回される人生は、どこか寂しい。

ある青年が、インターネットがない時代なんて想像がつかないとつぶやいていた。確かにある日突然にネットがなくなったら、知りたいことの検索もできなくなる。通販で物も買えなくなる。メールも使えなくなる。でもついこの間までは、それで生活していたのだ。何も不自由を感じなかったのだ。

スマホを失ったら生きていけない人が増えているような気がする。スマホは必ずしもコミュニケーションするための道具ではなくなった。スマホは持っていることが、まずは大切なのだ。つながるためでなく、つながっているという安心がまずは重要なのだ。そのような時代に、いま人は生きている。

長年連れ添ったパートナーを失ったら、残念ながらもはや生きていけない男性が多い。一方で女性は、生き返ったように第二の人生を始める。この違いは何なのだろうか。動物としての性の違いがそうさせるのか。それともそれまでの生き方が問題なのか。一人の男性としてそれが気になる。

ある有名な彫刻家が脳梗塞で利き手である右手が麻痺した。絶望的になった。でもその後左手で素晴らしい彫刻作品を残した。落語家が声帯を失ったら、サッカー選手が両足を失ったら、と思うこともある。でもきっと大丈夫だろう。もっと素晴らしい生き方を、その人たちはすることになるのだろう。

これを失ったら生きていけない。最後に残るのは命だ。命を失ったら生きていけない。生きていさえすれば、生きられる。少なくとも死ぬまでは生きていられる。生きているだけで儲けもの。そう思うことができれば、生きる上で怖いことは何もなくなる。僕はまだその心境には達していないけれども。