左と右 2017.04.30-05.06

前から気になっていることであるが、左と右、どちらが上位なのだろう。例えば正式の席で、偉い人の左側に座った方がいいのか、右側に座った方がいいのか迷うことがある。特に相手が女性の場合に難しい。そもそもどちらが上位なのかという本質的な問題があるからだ。

日本には、古くから「左上右下(さじょう・うげ)」という言葉があるらしい。左を上位、右を下位とするしきたりだ。たとえば左大臣は右大臣よりも位が高い。舞台でも左側(客席から見ると右側)が上手、右側が下手だ。日本での左上位の考え方に基づいてそうなっているらしい。

お隣の中国では、左右のいずれを上位とするかは、時代によって違ったらしい。おおむね左上位であったが、戦国・秦・漢時代は右上位で、この時代に「左遷」「右に出る者はいない」という言い方が生まれたらしい。唐の時代は左上位で、これが遣唐使を通じて日本に伝わったとされる。

日本とは逆に、西洋では右上位だ。その名の通り右(right)が正しい。これが国際儀礼となって、右上位が外交などの国際舞台では定着している。そう言えば、オリンピックの表彰台も、金メダリストの右側(向かって左側)が銀メダリスト、左側が銅メダリストだ。

軍隊では「右にならえ」をする。これは江戸末期に西洋式の軍隊用語をそのまま取り入れたものらしい。西洋では右上位で、整列するときは自分より右に偉い人がいる。その動作にあわせるのが「右にならえ」だ。似た言い方だけれども文章の「右に同じ」はまったく違う。縦書きの文化にルーツがある。

京雛では男雛が左、女雛が右(向かって見るとその逆)、関東雛は男雛が右、女雛が左だ。なぜ逆なのだろう。京都と関東では男と女の力関係が違うということではなさそうだ。京雛は日本の伝統的なしきたりに則っていて、関東雛は国際儀礼に従ったからだとする説があるけれども、真偽はわからない。

左と右、いったいどちらが上位なのか。調べてみると文化的な背景があってややこしい。正式の席では、偉い相手が日本的な伝統を重んじているときは右側に、国際儀礼を重んじているときは左側に座るということらしいが、面倒なときはとりあえず離れて座っておけばいい。これが僕の結論である。