仕事と生活 2017.10.15-10.21 

ワークライフバランスをテーマとして講演するたびに思う。本当に難しい。僕自身それと正反対の人生を送ってきた。反省するしかない。一方で、一人の人間の生き方としては、そのバランスは当然なのだ。当然のことがなぜできないのだろうか。

戦後の日本の産業界は、目前の競争に勝ち抜くために、ワークライフバランスを無視することによって成功してきた。しかし、24時間働けますかという価値観は、父親を家庭から奪い、結果として次の世代の働き手を育てることを怠ってしまった。いまの日本社会は、そのツケに苦しんでいる。

あなたが企業の採用担当者であったとして、どちらを採用しますか。A:24時間身を捧げる覚悟で働きます。B:子育ても含めた生活との両立を重視して働きます。もしAだとしたら、そこから変えていかなければ、ワークライフバランスの問題は解決しない。その企業の将来のためにもそれは必要なのだ。

ワークライフバランスの実現は社会の問題であるけれども、すべて社会のせいにして、他力本願になってはいけない。自分を被害者だと思ってはいけない。社会が変わるには、それなりの時間がかかる。それを待っていては、自分が損するだけだ。むしろしぶとく生きていく。大変だけれどもそれが必要なのだ

ワークライフバランスをとるうえで重要なのは、小さな単位でバランスをとろうと焦らないことだ。ある一つのことに没頭しなければいけない時期もある。それができた人は幸せだ。必ずしも毎日の生活の中でバランスをとらなくてもいい。一生かけてバランスをとってもいい。

たとえば育児など、毎日の生活でワークライフバランスをとらなければいけないときもある。そのときは一人だけでバランスをとろうと思わないことだ。みなが同じ悩みを抱えている。自分一人で頑張ってもできない。助け合うことによって、はじめて可能になる。あえてそれに甘えることが大切だ。

ワークライフバランスに特効薬はない。大切なことは「それぞれの生き方がある」ことを尊重することだ。たとえば自分が仕事中心で成功してきたからといって、それを部下に強制してはならない。その逆もある。ワークライフバランスのとり方は多様だ。一つの生き方だけを絶対視するとおかしくなる。