プレゼンツール 2017.11.26-12.02

いま理系の研究者にとって、パワーポイントは必須のツールになっている。僕が講演でパワーポイントを使うようになったのは約20年前、50代になってからだ。40代はOHPだった。その前の30代はスライドだ。そして20代は模造紙だった。それぞれに特徴があった。

僕が初めて学会で発表したのは60年代後半、修士1年の秋だった。模造紙で発表した。図表をマジックインキで手書きして、黒板に貼って見せた。いまのポスター発表のようであるが、教室での口頭発表だったので、大きな字で要点しか書けない。それがよかった。

70年代後半、僕が30代のときのプレゼンツールはスライドだった。画像も使えるようになったが、ワープロがなかったので、文字は依然として手書きだった。カードにきれいに清書して、それをスライド屋に持って行った。スライドは7行以内にまとめろと指導されたことを、いまでも覚えている。

30代の頃、技術講習会などで講師を依頼されたときは、スライドで講演した。スライドの問題点は、会場を暗くしなければならないことだ。当然ながら聴衆は眠くなり、睡魔と戦わなければならない。話す方はいかに聴衆を眠らせないか、それが勝負だった。

80年代後半、40代になってOHPが登場した。医学系の学会は依然としてスライドであったが、技術系ではOHPが中心になった。ワープロも普及したのでその出力をOHPにできたが、僕は講演では手書きにこだわった。自分でしかできないプレゼンをしたかったからだ。

90年代後半、50代になってパワーポイントによる発表が中心になった。プレゼンを手書きにこだわっていた僕には抵抗があった。せめて既存のテンプレートだけは使うまいと心に誓った。一方で自前のものを作成する能力はなく、結果として黒地に白抜きの文字という極めてシンプルなデザインとなった。

最近のパワーポイントの発表で気になることがある。役所の発表に多いのだけれども、やたらに一枚の情報量が多い。かつてスライドは7行以内と指導されていたが、それはどこに行ったのだろう。多くの情報を一枚に詰め込むとメッセージが伝わりにくくなる。何を言いたいのかわからなくなる。