肉 2017.12.03-12.09

「お肉にしますか。お魚にしますか」レストランでそう聞かれたら、僕は肉と答える。僕の世代は、なぜか肉にこだわりがある。学生のときのコンパはほとんどがスキヤキだったけれども、肉の争奪戦だった。飽食の時代になって、魚の方が健康にいいと言われても、やはり肉を選んでしまう。

肉はどうしてこんなに美味しいのか。もしかしたら自然の摂理なのではないのか。自然の生態系は、食物連鎖、つまり食う・食われるの関係の中で成り立っている。肉は他の動物によって食べられるためにある。その営みに僕も参加しているのだ。そう自分に言い聞かせながら今日も肉を食べる。

ヒトがいまの形に進化したのは、肉食のおかげだ。ホモ・サピエンスのホモ属は、脳が大きいことと道具を制作することで定義される。いまから二百数十万年前、我々の先祖は肉食を始めることによって脳が大きくなった。肉を切り裂くために道具を使うようになった。

おとなしくて消極的な男性を草食系男子、恋愛も含めて何事にも積極的な女性を肉食系女子と呼ぶらしい。本当に肉食によって積極性がでるのだろうか。草食だと消極的になるのだろうか。だとすれば国としてもっと肉食を推奨していいはずなのに、どうしてしないのだろうか。

宗教では、肉食は旗色が悪い。イスラム教では豚肉、ヒンズー教では牛肉を口にすることは禁止されている。仏教も精進料理では肉を食べない。肉食は殺生をともなうからであるが、そもそも肉は煩悩(欲望)を刺激するものとして罪悪視されることが多い。

宗教の戒律あるいは健康上の理由で菜食主義の運動を進める団体がある。一方で肉食主義を推進する団体は聞いたことがない。そもそも肉食主義なる運動があるのだろうか。菜食主義にはそれなりの主張があるけれども、肉食主義は単に肉が好き、それしかない。どうも分が悪い。

肉食は地球環境に悪い。家畜を飼育するために大量の穀物が必要とされる。その穀物を直接食料としたほうがはるかに効率がいい。畜産産業からの温室効果ガスの排出量は、地球環境の観点から無視できないとする報告もある。ここでも肉食は旗色が悪い。そのうちに肉食は禁止されるのであろうか。

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