文明 2017.12.17-12.23

明治の流行語に「文明開化」がある。当時は文明と言えば、西洋文明であった。そして戦後に生まれた僕にとっては、アメリカが文明を代表していた。最近、本当にそうなのかと思うようになった。いま西洋以外の世界の土地を訪れると、西洋文明だけが文明ではないことがわかる。

人類の歴史において、人口が急増したきっかけは少なくとも二つあった。一つは一万年前の農耕の開始、いま一つはわずか数百年前の産業革命だ。まさに文明が人口を増大させている。西洋文明は産業革命によって形作られた。それによって確かに人類は豊かになった。少なくとも物質的には・・・。

いわゆる物質文明がいつ始まったかは知らないが、物質的な富の追求が正当化されたのは近世・近代以降だろう。西洋を中心に、富を追求する経済社会システムが作られ、政治や法律は経済を支える僕(しもべ)となった。現代人はそのような経済人として、いまの時代を生きている。

文明は英語ではcivilization、都市化を意味する。現代人の多くは都市に住むようになった。それは自然とは隔離された空間だ。さらに言えば、人とも隔離された空間であるとも言える。そのような文明にどっぷり漬かって、いま人は本当に幸せなのだろうか。

いまの西洋文明は科学技術文明であると言える。それはいま情報革命の真最中にある。情報革命は、産業革命に匹敵する衝撃を人類に与えるかもしれない。例えばインターネットと人工知能が結びついたとき、それは人類にとって福音となるのだろうか、それとも脅威となるのだろうか。

いま地球上に70億以上のヒトが生息している。ヒトのみが大量に繁殖して、他の生物は絶滅の危機にある。これは生物の歴史から見れば異常なことだ。夜の地球を宇宙から見ると、ヒトがいるところは光っている。あたかも無限に増殖するガン細胞のように。

西洋文明が行き詰まったとき、その後にはどのような文明が主流になるのであろうか。イスラム文明だろうか、東洋文明だろうか。文明の衝突が起こるのだろうか。それともこれまでとは全く違う文明が、新たに生まれるのであろうか。いずれにせよ栄枯盛衰、文明には寿命がある。