挫折 2018.04.08-04.14

「人間的な魅力は、もしかしたら挫折によって培われるものかもしれない。」このような趣旨の話を学生にしたら、「そのためにはどう挫折すればいいのですか?」と質問された。うーんと唸ってしまった。挫折を手段と考えれば、確かにそうなるけれども・・・・。

「あなたの挫折経験は何ですか?」就活の面接でこのような質問が流行っているらしい。答え方の指南書もある。挫折をどう乗り越えてきたかを問いたいのだろうが、挫折が安売りされているような気がしないでもない。そもそも挫折は乗り越えるものなのだろうか。

挫折すると、自分には才能や能力がない、何をやってもだめだと思い込む。周りの人がみな自分より偉く見えてくる。そうなったら最後は居直るしかない。才能や能力がなくても、何をやってもだめでも、それでいいのだ。みな同じなのだ。みな挫折しているのだ。挫折こそが人生なのだ。

挫折したときに、挫折から逃げることは決して悪いことではないと僕は思う。真面目に挫折を考えていると、挫折はますます深刻になる。逃げていれば次第に時間が解決してくれる。自分一人で悩まずに、人にすべてを打ち明けてしまうのもいい。そのうちに悩んでいることが馬鹿らしくなる。

競争社会にあって勝者は、自分が勝ったのは努力したから当然であって、敗者は努力しなかったからであると考えがちだ。挫折も、弱者だから経験することだと考える。敗者や弱者は、すべて自己責任になる。その人たちへの共感は、そこからは生まれない。

人間的な魅力とは何か。一つには、自分を絶対視せずに、自分とは違う人たちの気持ちを共感できることなのではないか。挫折経験がないと、この共感ができない。挫折することによって、努力だけでは乗り越えられないことがあることを知る。挫折とはもともとそういうものだからだ。

挫折を考察した哲学者にヤスパースがいる。ヤスパースは、死や苦悩、あるいはそもそもの原罪など、人には意志や努力によっては変えられない巨大な壁があって、人はそこで挫折するしかないとする。そしてその挫折こそが実存に目覚め、自らを超えた存在に近づく道であるとする。挫折は奥が深い。

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