頬 2018.04.29-05.05

顔にある部品は、目、鼻、口、耳そして眉毛が目立つけれども、それだけではない。面積的に広いのは頬(ほほ)だ。漫画などでは頬は余白として描かれているけれども、実は人が生きていくうえで頬は重要な役割を担っている。たとえば頬がなければラッパは吹けない。

ゴジラの映画をみていたときに気づいた。恐竜には頬がない。一般に爬虫類には頬がない。ワニは頬があったら大きく口を開けられない。鳥類にもない。頬は哺乳類で目立つようになる。哺乳類は、その名の通り赤子のときに乳を吸う。頬がなければ吸うことができない。

頬の色は地域差が大きい。直射日光が強い地方では紫外線の影響をメラニン色素によって防ぐ必要がある。結果として頬の色が濃くなる。一方で、日差しが少ない地方では、太陽光がないと皮膚でビタミンDを合成できずクル病になりやすい。白人の顔が白く見えるのは、メラニン色素が少ないためである。

「顔色をうかがう」という言い方がある。人の顔には体毛がなく、しかも頬は皮膚が薄く、豊富な毛細血管が透けているので、血の巡りがすぐ顔色にでる。顔色によって健康状態もわかるし、その人の精神状態も顔色に表われやすい。相手の機嫌をうかがうときに、まず顔色を見るのはそのためだろう。

子どもは不満があるときは頬を膨らませる。言いたいことが沢山あるのに口の中に押し込めて我慢しているからだろうか。女性も頬を膨らませる仕草をする。それが可愛いと言う人もいるけれども、爆発すると大変なことになるので、早めに対処した方がいい。

知っているのに知らん顔をすることを「頬かむり」するという。体裁が悪いから顔を隠して何も聞こえないふりをするのだろうか。国会で答弁するとき、実際に文字通り頬かむりしたらわかりやすい。笑って許せそうな気がする。そう言えば、昔は空き巣は頬かむりをしていた。

頬は面積が広いだけに、加齢とともに進む顔の劣化がめだつ。単に皮膚の色や質感が変わるだけではない。次第に頬がたるんで重力に負けて下膨れになる。それをどう隠すかが、メイクの基本だと聞いたことがある。かように顔の中で頬は重要である。大切にしたい。