台風がまた近づいている。この夏は猛暑と台風の繰り返しだったような気がする。これはたまたま今年がそうだったのか。あるいは来年以降もこれが続くのか。科学技術がこれほど進歩しているのに何とかならないのか。
20世紀初頭にある新聞が20世紀中に実現できることを23項目予言した。その一つに、台風が発生したときは、大砲を空中に放ってそれを雨に変えることができて、20世紀の後半には海難事故は無くなるとある。他の予言はかなり当たっているのに対して、これは外れている。その目途もたっていない。
核爆弾を何千発も投下する。ヨウ化銀を空気中に大量に散布して人工雨を降らせる。潜水艦を用いて海中の低温水をくみ上げて海面水温を下げる。台風を消滅させるアイデアは色々とあるけれども、台風もまた自然の営みだとすれば、自然の生態系を乱すことなく、果たして台風を制御できるのか気になる。
このエネルギー不足の時代に、台風は桁違いのエネルギーで我々の生活を脅かす。恐れおののくだけでなく、そのエネルギーを逆に活用できればと夢想する。地震も同じだ。プレートに蓄積された歪のエネルギーを少しずつとりだして利用する。そうすれば地震はなくなり、エネルギー問題も解決する。
台風は日本列島を狙い撃ちにする。わざわざ方向を変えて、日本列島を舐めるように縦断する。大きな地震も多発して、被災地を苦しめる。火山も噴火する。日本列島は災害列島のようだ。昔も今もそうだとすると、日本人はそれを前提に生きてきたのだろう。だから日本人はしぶといのだろう。
和辻哲郎は、世界の風土をモンスーン型、砂漠型、牧場型の3つの類型に分類した。日本はモンスーン型で、自然は豊かな恵みをもたらす一方で、突発的な台風や大雪などが猛威をふるう。それが日本人の性格、さらには文化にも影響を与えていると、和辻は説く。台風もまた日本にとって文化だったのだ。
それにしても、今年の台風はおかしい。数も多いし、進路もおかしい。地球温暖化による海面水温の上昇が原因なのだろうか。もしそうだとすると、台風の消滅などという対症療法ではなくて、その元を絶たなければならない。それがいま問われている。