ベストセラー 2018.10.14-10.20 

いつからだろうか。○○万部突破と銘打った「ベストセラー本」の車内広告が目立つようになった。感動したとする読者?の感想文も数多く列挙されている。実は僕はそのようにして広告された本をほとんど買ったことがない。僕にとっては、本よりも広告の方が興味深い。

個人的には、○○万部突破と宣伝されているベストセラー本は、あまり好きではない。内容の問題ではない。単に僕がへそ曲がりなだけかもしれない。ベストセラーになることを目的として戦略的に発売された本は、なぜか買う気がしないからだ。その本が10年たってもまだ売れていれば買うかもしれない。

ベストセラー本には「〇〇のための○○箇条(あるいは○○の法則)」をタイトルとしたものが目立つ。そのほとんどが、読者の手っ取り早い勝利欲や成功欲を刺激するものだからだろう。いわゆる自己啓発本も、競争の勝利と人生の成功を目的とするものである限り、同じであるとも言える。

ベストセラー本がなぜ売れるのだろう。皆が読んでいるから良い本だと思うのだろうか。世の中の流れに取り残されたくないと思うからだろうか。大勢に従っていれば、とりあえず無難だということなのだろうか。自らの信条に自信が持てない、そのような時代だということなのだろうか。

ベストセラーとロングセラーは違う。ベストセラーは消費されるだけの消耗品であると考えた方がいい。人は、モノやエネルギーだけでなく、情報をも消費して生きる。これに対してロングセラーは文化として歴史に残る。その文化は伝承されて人類の財産となる。

人類史上の最大のロングセラーは聖書だ。それはベストセラーでもある。ここ200年だけでも4千億冊近くが販売・配布されたというデータがある。ロングセラーでもありベストセラーである書物は古典と呼ばれる。古典には時空を超えた普遍性がある。

ベストセラー本が売れているということは、まだまだ紙の本の文化が健在であると喜んでよいのだろうか。一方で悪貨が良貨を駆逐しているとしたら、それは嘆かわしいことになる。ベストセラー本の流行が、一つの文化が消滅する前兆だとしたら、文化とは何かを改めて問い直さなければならない。