四苦 2019.09.15-09.21

四苦八苦という言い方がある。借金に追われて四苦八苦する。そのような使い方もあるけれども、もとは仏教用語だ。そのうちの四苦は、生老病死の苦、すなわち生きること、老いること、病むこと、死ぬこと、すべてが苦であることを意味する。

四苦八苦の四苦は生老病死。仏教では、苦は「思い通りにならない」ことを意味する。それがなぜ苦なのか。思い通りにならないことに執着するからだ。無理に思い通りにしようとするからだ。そこには何ら実体がないことに気づけば、思い通りにならないことが苦でなくなる。

四苦八苦の四苦は生老病死。生までも苦であるということは、生を謳歌している現代人には理解し難いかもしれない。一方で、現代も生きることは思い通りにならない。思い通りにならないから自殺者がでる。思い通りにならないから、マニュアル本がベストセラーになる。

四苦八苦の四苦は生老病死。老いは長生きをすれば避けられない。老いるとまず、身体が思い通りにならなくなる。心はどうであろうか。これは気の持ちようかもしれない。大切なことは、若さを基準としないことだ。それだけが価値だと思わないことだ。

四苦八苦の四苦は生老病死。病いは辛い。体も自由にならないし、生活や仕事ができないことへの焦りも生じよう。一方で、病むことによって得られることもある。たとえば病むことによって、自分がいかに身近な人から支えられているかがわかる。それに気づけば感謝の日々が始まる。

四苦八苦の四苦は生老病死。死は誰にも訪れる。これこそ思い通りにならない。一方でこう考えたらどうだろう。人が不老不死になったとしよう。そのとき人は果たして生を大切にするだろうか。生きることを充実させるために死がある。そう考えれば、死に対しても感謝の気持ちが生まれる。

四苦八苦の四苦は生老病死。ちなみに八苦は、これに愛別離苦(愛する人と別れる苦しみ)、怨憎会苦(怨み憎みに会う苦しみ)、求不得苦(求めるものが得られない苦しみ)、五蘊盛苦 (心身の五つの要素による苦しみ)が加わる。このすべてが空だと悟れば涅槃寂静の世界に入れる。僕には無理だけれども。