塾 2019.09.22-09.28

個人的なことになるけれども、東日本大震災の直後から塾を開いている。もちろん学習塾ではない。勝手に僕が90分話す。話題も専門とは無関係に、宇宙論から恋愛論まで、そのときに興味を持ったことを話す。それでよければ聴きに来たい方はどうぞ。それだけのささやかな個人講演会だ。

なぜ僕の塾が、僕しか話さない個人講演会なのか。理由は簡単だ。ゲストの講師を招聘すると、それなりの謝礼が必要になる。日程調整も面倒だ。僕だったら謝礼はいらない。日程調整も楽だ。自分で会場を予約して、自分で案内をだして、自分で講演する。さすがに受付は手伝ってもらっているけれども。

僕の塾には20代から80代までさまざまな分野の方が集まる。でもそれは、よくある異業種交流会ではない。仕事の名刺の交換会ではない。仕事に役に立つことは話さない。仕事の顔とは別に、自分だけの顔を持ってもらいたい。そのような気持ちで開いている。

塾と言えば、幕末の松下村塾が有名だ。いまの日本にも、政治家や経営者を育てるための塾が数多くある。著名な俳優や劇作家が若手を育成するための塾もある。僕の塾はそんな大げさなものではない。奇特な人が集まって、僕の暇つぶしにつきあってくれる。ただそれだけの塾だ。

ある方から言われた。塾はビジネスになる。著名な講師を並べて、10万円以上の年会費をとって、さらには全国展開をすれば、塾生は数千人にもなる。その方の塾はそうらしい。僕の場合は、毎月の出席者は高々数十人、会費が千円だからいつも赤字だ。信じられないと言われた。

僕の塾は、実は僕自身のためにある。定年になって、新しいことを学ぶ時間が少しだけ増えた。僕は長いこと教育に携わっていたからよくわかる。学ぶために一番いい方法は教えることだ。人に話すことだ。塾は僕にとってレポート発表の場だ。聴いてくれる人がいるから頑張って学ぼうという気になる。

個人的に毎月開いている塾が、ちょうど今日で100回になる。よく続きましたねと言われるけれども、僕にはその感覚はない。この歳になるとあっという間に月日が経つ。毎月こつこつと続けていれば、あっという間に100回になる。むしろ大変なのは、聴きに来られる方だ。ありがとう。