酉年 2017.01.01-01.07

今年は酉年、僕の干支だ。僕は1945年の酉年に生まれた。それは終戦の年であった。母の胎内にいるときに家が焼かれ、終戦の翌月にこの世に生を授かった。大変な年に生まれているけれども、その後の激動の時代を目撃できたことは幸せだった。

1957年の酉年。この年、初めての人工衛星スプートニクがソ連によって打ち上げられた。僕は小学校の6年生になり、翌年の卒業文集にこう書いた。これからは宇宙の時代。地球が一つになれば、世界から戦争はなくなるだろうと。人工衛星が東西冷戦という戦争の産物であったことも知らずに。

1969年の酉年。アポロが人類初の月面着陸に成功した。インターネットの前身となるARPANETが誕生した年でもある。一方で、その年の一月に安田講堂の落城があった。僕はそれを身近に見て研究者としての道を歩み始めた。さまざまな意味で刺激的な年であった。

1981年の酉年。宇宙開発は予算の関係で再使用可能なスペースシャトルの時代となった。社会的にはエイズが発見されるなど、未来への不安がよぎった年であった。個人的には、新たな研究分野の模索を続け、さまざまな分野の研究者と交流した。それが結果として僕の財産となった。

1993年の酉年。画像が扱える初のウェブブラウザとしてMOSAICが登場して、宇宙の時代から情報の時代となった。翌年僕のホームページが作られ、顔のシンポジウムでプロに化粧してもらった歌舞伎顔がトップページを飾った。それはネットでの僕の顔になった。翌々年に日本顔学会が発足した。

2005年の酉年。僕は還暦になった。気持ちの上では第二の人生が始まった。何が変わったのか。それまでの専門にこだわらなくなった。一人の人間として自然に湧いてくる知的好奇心に対して素直になった。その時に興味を持ったことが僕の、ささやかであるけれども専門であると思うようになった。

2017年。生まれた年を含まないで数えると、6回目の酉年を迎えた。どのような年になるのだろう。戦後の右肩上がりは既に終わり、先が読めない時代となった。逆に個人的には先が読める年代になったけれども、それでは面白くない。予測できない新たな人生へ向けて、まずは最初の一歩を踏み出したい。